エントリーシート

 

16時50分

 

天の声「出した方がええで」

 

それまでエントリーシートを出すか出さないか

布団で寝転がりながら迷い続けた福原は

 

16時55分

 

筆を走らせはじめた。

 

しかし、1つだけ心配なことがあった。

それは19時までに郵便局に速達で出さないと

締め切りに間に合わないということだ。

 

布団で寝転がり続けた理由はこれだ。

 

17時30分

 

二枚構成のうち一枚が完成。

郵便局まではチャリで10分もかからない。

つまり18時30分までに完成させれば問題ない。

「楽勝やんけ」と笑みがこぼれる。

 

17時50分

 

二枚目が完成間近になった時

一枚目の「中学卒業年」のミスに気づく。

しかし焦ることはない。

2から3への書き換えは朝飯前。

下が妙にふっくらした「3」で誤魔化す。

 

18時20分

 

二枚目一度失敗したものの、なんとか完成。

ホッチキスで留めてコピー、、、

 

「黄色インクがないので印刷できません」

 

またや。なんでウチはいっつも黄色だけ

そんなすぐ無くなるんや。

父さんはヒマワリを使った新しいビジネスでも

考えてんのか?その資料のせいか?

 

 

 

「コンビニへ寄る」という用事が増えた。

 

 

18時30分

 

お茶を飲んで家を出た。

 

18時35分

 

コンビニ到着。

アホみたいな分厚さの資料をコピーしてる若い兄ちゃん。

それ全部エントリーシートか?

 

別のコンビニへ。

 

18時40分

 

ちょっと郵便局から離れたけど、

コピー完了。

 

18時45分

 

郵便局到着。

 

エントリーシートをコンビニへ忘れる。

 

「うそやん。誰も取らんといてよ」

 

天の声「とるかアホ」

 

18時50分

 

郵便局へ戻ってくる。

「あと10分か…まぁ待ち合わせにしたら10分前なんてセーフ中のセーフや」

 

ホッとしながら最終確認。

そしてハッと気づく。

 

“印鑑を押してない”

 

やばいやばいやばいやばい。

(無くても、、いいかな、、??)

 

天の声「印鑑忘れるとか、確認してないみたいなもんやん。私仕事できません言うてるもんやん。」

 

オッケーGoogle「100円ショップ」

 

Google 《徒歩5分のところにあります》 

 

福原《それをチャリ2分って言うんや》

 

 

18時52分

 

100円ショップ。

印鑑のあのぐるぐる回るやつを探す。

どこや?ぐるぐる回るやつ。

早よ出てこい、ぐるぐる回るやつ。

 

そして発見。

「ふ、、ふ、福原、、、あったぞ!」

下から3段目左から6番目。

彼はその印鑑を購入し、郵便局へ………

 

18時53分

 

「朱肉ありますか?」

 

ハァハァ言いながら、まるで朱肉のために幾多の困難を乗り越えてきたのごとくそれを求める福原。(実際いくつか超えてきたが)

 

「はい、どうぞ〜。あ、まずこちらに試し押ししてくださいね!」

 

試し押し?そんなもんしてる場合ちゃうねん...

 

天の声「しといた方がええんちゃうか?」

 

 

 

 

しゃあなしやぞ、、

 

 

 

 

【福武】

 

 

 

 

 

 

 

いや誰やねん。

待てよ。誰やお前。

 

 

 

 

疲れてんのかな?

 

そう思いもう一度押してみる。

 

 

 

 

 

 

【福武】

 

 

 

 

 

それが福武との初めての出会いだった。

 

 

 

 

18時56分

 

 

100円ショップ。

まさか人生であのぐるぐる回るやつを

こんなに早くぐるぐる回す日がくるとは。

 

 

皮肉にも

下から3段目の左から6番目だけが売れてたからすぐに見つけられた。

ありがとう福武。

お前の上に住んでる福原ってやつも

家を出るらしいわ。

 

 

レジが恥ずかしかった。

数分で2つの印鑑を買うなんて。

 

 

それでも店員さんは笑わんとお会計してくれた。

きっと彼が笑うのは、

上下2つが綺麗に売れたあの穴を見てからやろうな。

 

 

 

 

 

俺が店員やったら数分で帰って来てまた必死にぐるぐる回してる段階で笑うけどな。

 

 

19時01分

 

 

19時を過ぎた。

19時は郵便局が閉まる時間だ。

 

 

それでも郵便局は空いていた。

 

1軒目のコンビニで大量コピーしてた兄ちゃん

が、大量の郵便物を出していたからだ。

 

 

こんなことってあるんやな。

ありがとう兄ちゃん。

ロー○ンで恨んだ目で見てごめん。

 

 

 

 

と、まぁ結局エントリーシートは出せたものの

 

ギリギリはほんと良くない。

ギリギリで生きていいのはKAT-TUNだけ。

 

 

 

20時15分

 

福武とコンビニのゴミ箱でお別れ。

元気でな。

 

 

おわり